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裏ハムラ法手術(脱脂+脂肪注入法との比較について)

52才女性の裏ハムラ法手術症例です。
ハムラ法というのは目袋の膨らみの原因である突出した眼窩脂肪をその尾側の窪みの位置に移動(再配置)する概念で、この操作を瞼の裏側から行う術式が裏ハムラ法になります。
皮膚側から操作しないのでダウンタイムが短くて済む優れた方法なのですが、術野が狭くて手術手技の難度が高いため行っている医者は多くはないと思います。

裏ハムラ法を行っていない施設では、脱脂術(眼窩脂肪の摘出)単独もしくは脱脂術と脂肪注入の併用で対処しているところが多いと思われます。

ある程度以上の大きな手術を考えている患者さんは複数のクリニックでカウンセリングを受けていることが多いです。
そして当院でのカウンセリングで裏ハムラ法をすすめた場合、他院では脱脂術プラス脂肪注入をすすめられたのですが両者で何が違うのですか、あるいはどっちがいいのですかという質問をされる方が多いです。
今日はこの辺りについての私個人の意見を述べたいと思います。

まず、話は変わりますが体表面のどこかにある程度以上の大きさの腫瘍(良性もしくは悪性の出来物)があったとします。
この場合、形成外科医は次の3通りの順番で方法を模索します。

①まず腫瘍を切除し単純に縫合できるものはこの方法を取る
②単純に縫合できないもしくはそれではひずみが大きくなりそうな場合、周辺の皮膚を利用して欠損部を閉じる(局所皮弁と言います)
③周りの皮膚でもやりくりできないほど大きな欠損に対しては植皮(体の他の部位の皮膚を採取して欠損部に張り付ける)あるいは体の他の部位の組織を血管が付いたまま採取しそれを欠損部に移植し血行再建術を行う(血管柄付き遊離複合組織移植といいます)

要するにわかりやすく言えば取るだけで済むものは取る、取るだけではうまくいかない場合は周りの組織を移動する、周りの組織が利用できない場合には離れたところの組織を採取し移植するということです。

そして目袋の膨らみをこれにあてはめると
①の単純切縫が脱脂術に相当
②の局所皮弁がハムラ法に相当
③の植皮が脂肪注入に相当
ということになるかと思います。

脱脂術のみで済む場合はこれが一番侵襲が少ないですが、多くの症例では膨らみのみではなくその尾側の窪みが合併していますので取るだけでなく窪みを膨らませた方がよりフラットになります。
そこで周りの利用できるもので膨らませるやり方がハムラ法ということになります。
ここで重要なのはハムラ法で移動する眼窩脂肪は血管がつながったままの移動であるのに対して、脂肪注入は植皮と同様一旦血行が遮断され毛細血管が新生し血行が再開されるまで4~5日要するということです。

このように一旦血行が遮断されることの影響は植皮術の場合、移植皮膚の拘縮(硬く縮こまること)や色素沈着あるいは壊死(植皮が生着しないこと、つまり植皮の失敗)につながり脂肪注入の場合、生着率の低下やしこりの発生などにつながります。
注入の技術が適切であれば目立つようなしこりの発生は稀ですが生着率の問題は避けられません。
コンデンスリッチファットなど脂肪注入の技術は向上していますがそれでも生着率は約50%ほどです。
ですので単純計算では窪みを埋めるのに必要な量の倍の脂肪を注入する必要があります(実際に倍量注入するとかなり腫れますので若干控え気味にします)。
生着しなかった脂肪は1~2ヶ月で吸収されますので形の完成はこのころになります。

脂肪注入1週間目でほとんで腫れていない症例写真を見かけたことがありますが、個人的には2ヶ月後の完成時には窪んでしまうのではないかと思います。
これにたいしてハムラ法での脂肪移動は血行が維持されたままの移動ですので体積が減少することなく、その結果、手術成績が安定しているように思われ当院では積極的にこちらの方をすすめさせていただいております。


2023.03.14

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